水滸伝<岩波少年文庫版>

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水滸伝<岩波少年文庫>


面白い :☆☆☆☆
感動した:☆☆
役に立つ:☆☆☆☆
薦めたい:☆☆☆☆☆


北方謙三版の水滸伝を読んで、
これはどうしても元の話を知っておきたい!と思いました。
しかし岩波やちくまから出ている全訳にかかるのは骨が折れそうなので、
岩波少年文庫の抄訳版全3巻に手を出すことに。
これが思いがけずいい選択でした。
物語が元々持っている(と思われる)無頼な雰囲気がちゃんと生きてる。
しかもこども向けのはずなのに、残虐シーン手加減なしでびっくりです。


<とりあえず、えー!!!と思ったところ>
 ・何かとお酒を飲みすぎてると思う。
 ・賄賂は当たり前らしい。捕まっても牢屋番に銀握らせれば個室付きの優雅な生活。
 ・秦明将軍は同志というより被害者じゃないだろうか。
 ・いくさに道術使うのはズルイだろう。
 ・酒屋に人肉料理場があるよ…少年文庫版なのに…人肉饅頭もちろん登場。
 ・朱仝勧誘の手口はあんまりだ(涙)
 ・聞煥章が梁山泊に捕まってる!!(北方版の「仕事のできる変態」イメージ引きずってるので驚愕)


北方版はストーリーを全く変えているのかと思えば、
史進と少華山の関係、生辰綱を奪う件、楊志魯智深が二竜山をとるくだり、
魯智深宋江梁山泊に入るまでうろうろしてること、
などはほぼそのままなんですね。祝家荘戦も。
でも印象は全然違う。
元の水滸伝は行き場所をなくした「はみだし者」が結果的に集まった、という感じで、
何かを目的として集まってるわけじゃない。最終的には国に取り込まれる。
北方版だと、梁山泊と宋側が和解するなんて絶対考えられないもの。


さて、下巻末についてる解説文が、また良いです。
物語の成立過程や現存するテキストの種類、日本への伝播と影響など、
このままWikipediaに載せたらどうだろう?というくらい詳しい上にわかりやすく、
この部分だけでも立ち読み推奨です。


今回読んで一番強く感じたのは、これは「元ネタ」としてすごく使い勝手がよさそうだということ。
キャラクターがはっきりしてる上に、それぞれがちょっと暗い過去背負ってたりして。
そもそも各地の講釈師がそれぞれ話を膨らませて、長く雑多なストーリになった、という
物語の発生からして二次創作的じゃないですか。
日本に渡ってからも江戸時代の里見八犬伝から現代の北方謙三まで、
長年元ネタとして使われ続けているわけで、
これからも「こんなの水滸伝じゃない!」というような派生作品が出てこないかなー、
5人選んで戦隊モノとか、女の子化してプリキュアとか、なんか色々作れそうな気がします。


<おまけ>
いつも美術展紹介を楽しみに読ませていただいてる、とらさんのブログに、
こんなのがありました。

歌川国芳「通俗水滸伝豪傑百八人之一個」一覧表

なぜか燕清だけ二枚あります。男前はやっぱり人気?
(3/31追記:とらさんご指摘のとおり三枚ある人もいます!探してみて!)
府中市美術館で開催中(5/9まで)の歌川国芳展でも、一部展示されているようです。



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