終の住処

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終の住処(磯崎憲一郎)


面白い :☆☆☆☆
感動した:☆☆
役に立つ:
薦めたい:☆☆


第141回芥川賞受賞作。
「『夫婦』と『時間』の物語」というのが何だか気になって、
文藝春秋買ってきました。(文春買ったのって、初めてかも!)
なぜか引き込まれて、あっという間に読んでしまいました。


なんとなく…の結婚、度々の浮気、11年間妻と口をきかなかったこと、
しかし夫はアメリカへの長い出張から戻った時、
二人が建てた家で死ぬまで暮らすことを確信します。


この物語の主人公は、妻の内面に全く立ち入れないまま、
妻の周りをぐるぐる回っているだけのような感じがします。
妻のささいな一言にいちいち意味を見い出し理由をつけようとするところなど
男性的な感覚なのかもしれません。


過去の様々な事実(浮気とか)よりも、長く夫婦であったことそれ自体のほうが
ずっと重みを持つというのは、
私のような結婚5年目の若輩者には、まだわからないのかもしれない。
主人公が、破綻した結婚生活に理不尽なことの多い仕事、という、
はたから見れば幸せとは思えない過去に激しく固執するのは、
時間の積み重ねだけが自分の生きた証なんだという叫びのように思いました。