沈黙の王

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沈黙の王 (宮城谷昌光)


面白い :☆☆☆☆
感動した:☆☆☆
役に立つ:☆☆☆
薦めたい:☆☆☆


表題作「沈黙の王」を含む、5つの短編集です。


耳は聞こえるがうまく話すことのできない商(殷)の王子は、
ことばと剣と鈴を両親から受け取り、旅に出されます。


臆病さを克服し、後に妻となる女性と出会い、学問を修め、
自分の「口」となる人物と巡り会い、
そして古代中国で初めて文字を創造するまでの、
ファンタジーのような物語です。
(「一人旅の王子」つながりで、読みながら頭の中に
ドラゴンクエスト」の旅の曲が流れていました^^)


いちめんの雪に点々と続く鳥の足跡をみて、
「天地のことば」、文字を創ることを思いつく場面が、美しいです。
当時、鳥は天帝の使いと考えられていたそうです。


他に印象が強かったのが、「妖異伝」の周王室の記録係、伯陽です。
占いにも長じた人だったので、
周の滅亡に早くから気づいていながら、
書庫の管理を黙々と続け、
亡命を勧められた時は、 部下たちを先に他国へ逃がした上で、
王の最期のことばを記すのが自分の役目だと、己の亡命は拒みます。


最後、王は殺され、書庫は燃え尽き、伯陽も矢を受けて亡くなります。
自分の仕事に殉ずるというのは私にはできないけれど、
そんな生き方もあるのかとため息が出ました。