三国志

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三国志 (北方謙三)


面白い :☆☆☆☆☆
感動した:☆☆☆
役に立つ:☆☆☆
薦めたい:☆☆☆☆☆


年明けに吉川英治版を再読したばかりのため、
どうしても比較しながら読むことになりました。
長い話なので(全13巻!)気になったことをいちいち全部は書いていられませんが、
たとえば…


・訓練された軍の強さ
  厳しい調練で死ぬ兵もいるけれど、そんな軍ほど戦場での死者は少ない、
  ということを皆わかっているからこそ、訓練が重要視されています。


・騎兵と歩兵の使い分け
  軍の動かし方が、映像で見えるような書きっぷりです。
  騎兵の使い方がポイントだから、馬の質も大切で、
  オリジナルキャラクターとして登場する馬牧場の人たちが、
  前半の各陣営をつなぐ役割を担います。


・登場人物の悩みが現代的
  宗教とは人間にとって何なのか、
  帝(日本に置き換えれば、天皇)とはどういった存在であるべきか、
  上に立つ人の、部下たちとの関係の築き方は、
  優秀だけど相性の悪い部下をどう使うか、
  目先の利益と形のない「口コミ」、どちらを選ぶのが得か、
  どこに勤めてもやりがいを感じられなさそうで、就職先を選べない、
 などなど。


この「悩みが現代的で共感できる」という点で、
初めて読む三国志としては、吉川英治版よりおすすめかもしれない。
ただし性描写が結構多いから、R-15指定かな。
後のほうに出てくる、魏のSMコンビ…びっくりしました。
 

主役級の人たちの死の場面には、それぞれたっぷり見せ場があり、
皆とても格好いいです。
どちらかというと脇役の人たちの去り際も、印象深いものがありました。
特に気になったのが伊籍。誰にも知らせずひっそり死んでしまうけれど、
受けた恩は決して忘れないどころか、何倍にもして返して去っていきます。


最近、中国ものといえば宮城谷さんの淡白な文章に慣れていたので、
それに比べて北方さんの文は熱かった。
出てくる人みんな、汗と返り血でべたついてそう。
でもそれはそれで、戦乱の時代には合ってると思いました。
そういえばこの時代、お風呂ってあったのかな。


お風呂ついでに気になったのが、兵糧ってどんなものを食べていたんでしょうか。
麦やお米のお粥みたいなもの?
塩も貴重だったみたいだし、味気なさそうです。