孟嘗君

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孟嘗君〈1-5〉 (宮城谷昌光)


面白い :☆☆☆☆☆
感動した:☆☆☆
役に立つ:☆☆☆
薦めたい:☆☆☆☆☆


「ワクワクする」という点で、これまで読んだ宮城谷作品の中で一番かも。
読み始めは「5冊もあるよ」と思ったのに、
4巻まで来たときには「もう残り1冊しかない…」と寂しい気分になりました。


斉の宰相で外交の名手・田嬰の家に男の子が誕生したのは5月5日。
「5月5日生まれの子は不吉」というだけで
生まれたばかりの子は殺されかけますが、
ひょんなことから無頼人・風洪に拾われ、育てられます。


風洪は30を過ぎてから学問を志した後に、
白圭と改名して歴史書にも残る大商人に。
前半〜中盤までは白圭の活躍(孫臏救出劇が盛り上がる!)や、
孫臏孫子の兵法を実践して敵軍をみごと撃破、といった、
孟嘗君(本名は田文)を育てた人たちのお話です。


そして残り1/3くらいになって、やっと田文がメインになります。
外交の田嬰、商売の白圭、兵法の孫臏といったすぐれた人達の中で育った田文は、
約束破ってあたりまえ、な戦国時代において、
決して信頼を裏切らないことが信条。
たとえ戦で勝っても勝ちすぎないようにし、
中小の国がバランスをとって共存共栄することを目論みます。


そんな田文を慕って、とにかくいろんな人達が集まってきます。
声マネがうまいとか、視力がすごくいいとか、
人形作りの名人とか、泥棒とか。
そんな「何の役に立つんだか」という人々を、多いときで3000人も養っていたそうです。


食客のひとりがニワトリの鳴き声をまねて、関所の役人に朝が来たと思わせ、
夜が明けないうちに関所を通過して逃げた、というわりと有名な話も
田文の逸話です。
養父・白圭は最期に
「文どの、人生はたやすいな。人を助ければ、自分が助かる。それだけのことだ。」
と言い残します。まさにこの物語を象徴することばだと思います。


副読本として孟嘗君と戦国時代 (中公新書)も一緒にどうぞ。
文庫各巻にも地図はついていますが、
こちらの方が地図が大きいし、各国の位置関係もわかりやすいですよ。