官僚たちの夏

61b7z9tfpel_sl500_aa240_


官僚たちの夏 (城山 三郎 )


面白い :☆☆☆☆
感動した:☆☆
役に立つ:☆☆☆☆
薦めたい:☆☆☆


先日見たドラマの、原作を読んでみました。
主人公は通産省の風越信吾(ドラマだと佐藤浩市)。
<おれたちは国家に雇われている。大臣に雇われているわけじゃない>
というのが信条で、日本の産業を守っているのは通産官僚だ、という熱い人間です。
その一方で、根回し・気配りの類いは苦手な、官僚らしからぬ「雑な男」でもあります。


天下国家のために無定量・無際限に働く、というのは美しいのですが、
俺たちがこれだけ必死になって国民を守ろうとしているのに、
周囲の人間は何でわかろうとしないんだ、というのは
ちょっと傲慢なんじゃないかという印象も受けました。
風越とは対照的に「余力を残してのびやかに働く人」として描かれている
片山(ドラマだと高橋克典)のほうに、どちらかというとシンパシーを感じました。
「官僚だけが肩怒らせる時代ではない。
どんな職場でも結局は天下国家のために役立っているはず」
というのが、片山の考えです。


とはいえ、私心なく四六時中ただ国のことを考え働いた
風越(とその一派の人々)の情熱が価値のないものだとはとても言えません。
そういう一途でがむしゃらな働き方ができるというのも、幸せの一つの形だと思いました。