世界は分けてもわからない

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世界は分けてもわからない (福岡伸一 )


面白い :☆☆☆☆☆
感動した:☆☆
役に立つ:☆☆☆
薦めたい:☆☆☆☆


「生物と無生物のあいだ」「できそこないの男たち」で知られる
福岡伸一さんの新著です。


物語はイームズやポール・ゲティ・センターや須賀敦子…といった
生物学とは遠く離れたところを、
まるで栓を抜いたばかりの風呂の水のようにゆっくりと廻りながら始まります。
「この本は何の話なんだっけ?」と度々思わせられるけれど、
後半になって話の核心に一気に吸い寄せられていくスピード感に、今回もやられてしまいました。


「全体」から「部分」を理解しようとする「マップラバー」(地図好き)
「部分」の集積で「全体」を知る「マップヘイター」(地図が苦手)


世界を理解する方法はこの2つに分けられる。
けれども「部分」と「部分」の分かれ目は曖昧で、
たとえば「鼻」はどこまでかと考えたとき、
鼻の穴の奥の空洞は、その先の神経は、さらに先の脳の中は…と区切りをつけられない。
「全体」を知るには「部分」を知らなければならない、
けれどもいくら「部分」がたくさん分かっても「全体」を知ったことにはならない。
「全体」を掴むには、マップラバーの目と、マップヘイターの目を行き来すること。
本の後半は、「部分」を切り取ることに執着しすぎた若い科学者の話が中心になります。


「全体」と「部分」の両方を見続けること、
建築設計の仕事に通じるものがあると思いました。