遠い朝の本たち

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遠い朝の本たち (須賀敦子)


面白い :☆☆☆☆
感動した:☆☆☆☆
役に立つ:☆☆☆☆
薦めたい:☆☆☆☆☆


すこし前に、毎日新聞のまとめた調査で「『本が好き』急増、中高生で7割超」という記事がありました。
今の中高生はどんな本を読んでいるんだろう?という興味もありますが、
どんな本にせよ「本が好き」なんて言われるとなんだか悪い気がしない。
本にのめり込む体験は、中高生のうちにしておいたほうがいいなあ、と思います。


須賀敦子さんもこどもの頃、「本に読まれ」てお母さんにしばしば注意されていたそうです。
この本の中には、こんな一文がありました。

  文章のもつすべての次元を、ほとんど肉体の一部として
  からだのなかにそのまま取り入れてしまうということと、
  文章が提示する意味を知的に理解することは、たぶんおなじではないのだ。

そしてこの本では、須賀さん自身の「文章をからだのなかにそのまま取り入れた」体験が語られます。


小説の中の活発なアメリカの少女に心酔して、よその庭に勝手に入って探検ごっこをしたり、
小学3年生の時は「4年生向き」の本を、4年生の時は「5年生向き」の本をもらって大喜びしたり、
「少女の友」の中原淳一の挿絵を「こんななよなよした絵」と大人たちに言われて憤慨したり、
戦時中、「読んだことを人に言ってはいけない」西洋風の物語を友達と回し読みしたり…


幼い頃に本好きだった人なら「わかる、わかる、その気持ち!」とうなずくはず。
(ただし私が読んでた本は、須賀さんに比べたら随分幼稚だなあと思いつつ)
知的に理解できなくてもページを繰る手を止められず、日中もその本の世界から出てこられないような
読書体験は、大人になってしまうとなかなかできないけれど、
そんな経験の積み重ねの末に「どんな大人になりたいか」というイメージを、
少しずつ身につけていく様子が見えるような、そんな一冊です。


中ほどに、大西洋横断飛行をしたリンドバーグの奥様である
アン・モロウ・リンドバーグのエッセイが登場します。
この人のことは初めて知りましたが、
須賀さんの文とも近いような、平易なことばで物事の本質をとらえる文章に、
とても興味を持ちました。今度読んでみたいと思います。

海からの贈物(アン・モロウ・リンドバーグ)
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