管仲(上・下)
面白い :☆☆☆☆
感動した:☆☆☆
役に立つ:☆☆☆
薦めたい:☆☆☆☆
「管鮑の交わり」なんて故事成語でも知られる、管仲と鮑叔の物語。
貧しくて、運にも恵まれず、暗い印象の管仲、
対照的に、貴族の息子で、闊達で、誰からも好かれるタイプの鮑叔。
2人とも頭はいいけど、賢さの質が違って、
管仲は「叡」、鮑叔は「聡」っていう雰囲気です。
一方に光が当たれば、もう一方は影にまわる。お互いそれを嫌がるわけでもなく、
光の側にいる方が、もう一人を支える。
光と影は度々入れ替わるけれど、光に当たるために生きているわけではないから
相手を羨ましがったりしない。友人を活かすために自分が影の側にまわることも平気です。
管仲は公子糾に、鮑叔はその弟の公子小白に仕えます。当然後継者争いになります。
糾も小白も「理想の上司」とは言い切れませんが、
仕える以上、自分の主君が跡継ぎになれるよう、それこそ命がけで力を尽くします。
サラリーマンの宮仕えの苦労…とも読めますね。
勤め人なら身につまされるかも。私も会社勤めしてる間にこれを読めばよかった。
若い頃の、下積み時代が丁寧に書かれているので、「天下の名宰相」がとても身近に感じられました。
さて、宮城谷さん作の、斉を舞台にした長編はこれで一通り読んだことになりました。
古い順から並べると…
太公望(斉の建国)→管仲→晏子→孟嘗君→楽毅→香乱記(滅亡)
見事に生きて斉の国を建てた太公望からスタートし、
時代が下るにつれて「生き方の見事さ」が必ずしも通用しなくなっていく、という印象を受けました。
「香乱記」の主人公・田横は、劉邦軍に謀られて斉を取られ、
最期は自ら首を刎ね、従った人々も殉死してしまいます。
春秋の頃は戦争すらまだおおらかがあるのですが(冬になるとさっさと帰ったりして)
戦国時代になると目的のためには手段選ばず!それはそれで面白いのけど、
個人的には春秋のほうが情緒があって好きかな。
次に手を出すとしたら晋シリーズですかね。「重耳」とか。楽しみです。