重耳

51dr79gmy6l_sl500_aa240_


重耳(宮城谷昌光)


面白い :☆☆☆☆☆
感動した:☆☆☆☆
役に立つ:☆☆☆
薦めたい:☆☆☆☆


今年最後の読書メモは、やっぱり宮城谷さんで締めたいと思います^^
なんといっても今年の(読書上の)大収穫は、長年離れていた
歴史小説」というジャンルに戻ってこれたことなので。


中国春秋時代の覇者のひとりに数えられる、晋の文公こと重耳が主人公、ですが、
「天下に覇を唱えるには三代はかかる」と書かれるとおり、
重耳の祖父、武公の時代からストーリーが始まります。
上巻は重耳の祖父(晋の分家)が、本家をしのぐ力をつけ、ついに晋を乗っとるまで、
中巻は重耳の父が、うんと年下の美女に惑わされて、国が崩れていくさま、
そして下巻、父のせいで食うや食わずで諸国を放浪し、19年後ようやく国に帰って
覇者として認められるまでの、長い忍耐の物語です。


重耳自身は、兄や弟に比べて特に利発ということもなく、
あれは後継者になれないだろう、と多くの家臣たちに思われているような人です。
ただし兄弟たちより優れた点があるとすれば、家臣の言葉を素直に聞くところ。
わからなくても、適当にわかったふりもせず、反論したりもせず、

  「くりかえして自分でいってみよう。そのうちに身につくだろう」

と、まずは愚直に受け入れる。こういう態度ってなかなかとれないです。私も。


兄の申生は、自分を疎んじる父に決して逆らわずとうとう死んでしまい、
弟の夷吾は、自分の能力を過信して自滅する。
そんな中で、重耳のように、耐えて生き延びることも
時には一番強力な武器になるんだな…、いや、
不遇のときが続いても、くさらずにただ耐えて生き延びること自体が
本当に難しいのだろうと感じます。


しかし重耳自身は聖人君子でも英雄でもなく、相当「普通のひと」という印象でした。
放浪中にひどい目にあわされると腹をたて、
斉の国で優遇されたときは、もう晋に帰るのは諦めてここで暮らそうと思ったり、
帰国後、家臣たちへの報奨が不公平!と謀反を起こされもします。


そんな重耳を支え続け、帰国を諦めかけた重耳をむりやり引っぱりだしてしまうような、
個性的な人物の集まった家臣団がいいです。
彼らや、彼らの一族を扱った、「重耳」に連なる作品がいくつかあるようなので、
次はそれを読んでいこうと思います。


にほんブログ村 本ブログへ