利休にたずねよ
面白い :☆☆☆☆
感動した:☆☆
役に立つ:☆☆☆
薦めたい:☆☆☆☆
物語は利休切腹のその日から、
利休と、彼が大切に隠し持っているちいさな緑釉の小壺をめぐって遡っていきます。
各章ごとに、話者が変わります。利休本人だったり、秀吉だったり、利休の妻たちだったり。
章が進むにつれ、緑釉の壺の秘密が少しずつ明らかになっていきます。
当然のことながら、著名な戦国武将が幾人も出てきます。
それぞれの、茶への向き合いかたが面白いです。
名物道具が、なぜ名物なのかわからないと正直に口に出す上杉景勝。
師の利休の茶を模倣することで真髄をとらえようとする細川忠興と、
逆に自分ならではの創意工夫によって茶の道を見出そうとする古田織部。
茶室はあかるく心地よいのがいい。暗くて狭い茶室をつくる利休はわからない、という石田三成。
茶席での利休の臨機応変の対応に、軍略に通じるものを見た黒田官兵衛。
それぞれの性格、生き方を「茶」というファクターを通すことで
わかりやすく提示することに成功していると思います。
利休と高麗の女性とが、
白居易の詩で思いを通わせるシーンにはうっとりしました。
漢詩の教養は東アジアの共通語なんですね。今では失われかけてるけど、
もったいない気がします。
ただ、最後の、利休の妻宗恩の行動には違和感をおぼえました。
(ここは、詳しく書くのはやめておきます。読んでからのお楽しみ!)
第140回直木賞受賞作です。