柴田是真の漆×絵
三井記念美術館で2/7まで開催の
「江戸の粋・明治の技 柴田是真の漆×絵」展を見てきました。
「漆芸」、これまで東博などで目にすることはあっても、
積極的に見に行くことはなかったジャンルです。
それがどうして行く気になったかというと…
・幾人もの美術ブロガーさんたちがこの展覧会を絶賛していた
・古い友人がいつの間にか漆芸作家になってて、年明けにメールが来た
・たまたま読んでた宮城谷さんのエッセーに「柴田是真」の名前が出てきた
これはもう、この展覧会に呼ばれてるに違いない!
そして、出かけて大正解でした。この人のこと、知ることができて本当よかった。
まず最初の展示室には、
手の込んだ漆芸作品がひとつひとつ、ガラスケースに展示されています。
割れを木で補強した紫檀の香合…に見事ダマされました。
「紫檀塗香合」、実は紫檀そっくりに漆で仕上げ、補強も作り物、という
遊びごころいっぱいの作品でした。
他にも「だまし漆器」の作品はいくつもあって、
「どう見ても金属だけど実は和紙+漆」
「どう見ても陶器だけど和紙+漆」
お茶席などでふと手に取った時の、客のびっくりした顔を思い浮かべると
楽しくなってしまいます。
もう一つ、特に好きな作品が「竹葉文箱」
竹の葉一枚一枚、違う技法で作られた作品。でもくどくない。
余白が生かされていて、実にすっきりと、清々しい品です。
展示室4には絵画作品が集められていました。
是真の描く滝は、当時から人気があったそうで、
この展覧会でも滝を題材にした作品が数点出品されています。
おもしろいのは、滝の水そのものを描かず、
その周囲にある岩や植物、鷹などを描くことで水を表現しているところ。
漆芸作品にも言えることですが、余白の使いかたが本当にうまいと思います。
「漆絵」という、絵具の代わりに漆を使って描いたものもあります。
「南瓜に飛蝗図漆絵」
カボチャのはなびらの立体感と柔らかさが、
漆を使うことで奇妙なリアリティをもって再現されています。
ツルのいきいきとした描写も、植物の生命力にあふれています。
「烏鷺蒔絵菓子器」
2つの直方体をずらして合体させたような形の重箱。
片方の直方体には烏が、もう片方には鷺が、びっしりと描かれています。
エッシャーの鳥の絵を思い浮かべてもらえば、似てるでしょうか。
でもエッシャーよりモダンでゴージャス、そして洗練されてる。
…これ、欲しいな。
この写真だけじゃ、この作品のよさの何分の一も伝わらない気がする…
ぜひ現物を見てほしいのですが、展覧会は今週末まで。
今回出品された品々の多くが、アメリカのコレクターさんの所蔵品なので、
なかなか目にする機会はありません。
また見たい!また日本に里帰りしてね!と思わせられた展覧会でした。
味噌の仕込み<準備編>
だんだん恒例行事になってきた、手作り味噌の仕込み。
今年もこの季節がやってきましたー!
別に、秋に仕込んでもいいらしいんですが、素人がつくるにはカビがつきにくい
真冬がやっぱりオススメみたいです。
材料はこちら↓乾燥大豆1kg、生こうじ500g×2、塩490g、ホワイトリカー(消毒用)
毎年パルシステムで注文しています。
まずは仕込みの前日に、大豆を水につけておきます。
豆は吸水すると2倍ほどに膨らむので、大きめの鍋やボールに分けて入れてます。
水に浸けて、2時間ほど経ったところ↓もう1.5倍くらいに膨らんでます。
水に浸ける時間は12時間程度でよいようですが、結局24時間弱浸けてました。
さて、これから豆を茹でますよー。
一度、水をきって、新しい水を入れて茹でていきます。
大鍋がないので3つの鍋に分けて、コンロも総動員しています。
茹でている間に、塩切りこうじを作ります。
といっても、生こうじと塩をよく混ぜておくだけ。
塩を量ろうとしたら、はかりの調子が悪くて困りました…
「ON」のボタンを押してもエラーばっかり出て。やっぱりアナログなはかりがいいなあ。
生こうじは、ふんわり甘い香りがして、このまま食べちゃいたくなります。
あとは、大豆がやわらかくなるのを待つばかりです。
一番大変な(でも一番楽しい)まめをつぶす作業は、
午後からここに手伝ってもらう予定です。
続きはまたレポートしますね。
また、twitterの「おみそ部」でも作業状況をつぶやいてます。
今日は他にも味噌の仕込みしてる部員さんがいますよ。見てみてくださいねl
利休にたずねよ
面白い :☆☆☆☆
感動した:☆☆
役に立つ:☆☆☆
薦めたい:☆☆☆☆
物語は利休切腹のその日から、
利休と、彼が大切に隠し持っているちいさな緑釉の小壺をめぐって遡っていきます。
各章ごとに、話者が変わります。利休本人だったり、秀吉だったり、利休の妻たちだったり。
章が進むにつれ、緑釉の壺の秘密が少しずつ明らかになっていきます。
当然のことながら、著名な戦国武将が幾人も出てきます。
それぞれの、茶への向き合いかたが面白いです。
名物道具が、なぜ名物なのかわからないと正直に口に出す上杉景勝。
師の利休の茶を模倣することで真髄をとらえようとする細川忠興と、
逆に自分ならではの創意工夫によって茶の道を見出そうとする古田織部。
茶室はあかるく心地よいのがいい。暗くて狭い茶室をつくる利休はわからない、という石田三成。
茶席での利休の臨機応変の対応に、軍略に通じるものを見た黒田官兵衛。
それぞれの性格、生き方を「茶」というファクターを通すことで
わかりやすく提示することに成功していると思います。
利休と高麗の女性とが、
白居易の詩で思いを通わせるシーンにはうっとりしました。
漢詩の教養は東アジアの共通語なんですね。今では失われかけてるけど、
もったいない気がします。
ただ、最後の、利休の妻宗恩の行動には違和感をおぼえました。
(ここは、詳しく書くのはやめておきます。読んでからのお楽しみ!)
第140回直木賞受賞作です。
大きくなったら結婚する話
ここの「お気に入りのおとこのこ」は、しばしば変わります。
またその理由がおもしろいので、
時々「ここはクラスの男の子の中ではだれがいーの?」「なんで?」
と聞いて楽しんでいます。
この数カ月の、ここのお気に入りはS君。理由は、やさしいから、らしい。
確かに、S君はあんまり乱暴なことはせず、ひとり黙々と遊びに集中してるタイプの子です。
ある日の夕食時の、ここと私の会話↓
「ここ、おおきくなったらS君とけっこんするの!」
「え、大きくなったら結婚しよう、ってS君に言ったの?」
「うん、言ったよ!」
「(うわー、おもしろいなー4歳児)(パパこれ聞いたらショックだよ)」
「でもS君はRちゃんがすきなんだって」
「……へえー。。。でもS君はここと結婚してくれるの?」
「(ニコニコしながら)うんっ!」
まあ、これからもお友達のいいところをどんどん見つけてちょうだい。
それを相手に伝えてあげたら、お友達もうれしいと思うよ。
「ガランスの悦楽 村山槐多」展
渋谷区立松濤美術館で1/24まで開催の
「ガランスの悦楽 没後90年 村山槐多」展を見てきました。
村山槐多は、1919年に22歳で結核性肺炎で世を去った、夭折の画家です。
私の中での、村山槐多に対するこれまでのイメージは
「技術的に上手いかどうかは疑問だけど、何だか忘れられない絵を描く人」というものでした。
今回、槐多の作品を初めてまとまった形で初めて見ました。
形を整えて描くことよりも、内からとめどなく出てくる
描きたいという衝動が、先に手を動かしてしまう、という印象を受けました。
手紙もたくさん展示されており、字も、お世辞にも上手いとは言えないけれど、
それも、あふれだす言葉を書きとめることに必死だった結果のように感じます。
「尿する裸僧」という、それほど大きくないけれど不思議な気を放つ油絵作品があります。
木彫のように荒々しいタッチで描かれた赤い裸の僧侶が、
合掌しながら、放尿するという、異様な絵です。
生のエネルギーをとどめることなく放つ
この僧侶は、おそらく槐多自身の姿なんでしょう。
槐多は恋愛に関しても「熱い」人だったそうで、
年下の美少年に送った、バラ色の便箋に書かれたラブレターがありました。
「僕はあなたの精神にも肉体にも戀して居ます。僕と友達になって呉れないか」
こんな熱いラブレターもらったら、これをまともに受け止めるには相当勇気要るよね…
詩もたくさん残していることは、今回初めて知りました。
これがまた、胸に刺さるものがあります。中原中也の詩と近い印象を受けました。
結核持ち、夭折、一途な恋愛…結構共通点もありますね。
詩をじっくり読みたいがために、予定外の図録も買ってしまいました。
松濤美術館、なんと入場料300円です。
設計は白井晟一。階段のなめらかな曲線は必見!
エレベーターに乗ってる場合じゃありません。
獣の奏者(闘蛇編・王獣編)
面白い :☆☆☆☆
感動した:☆☆☆☆
役に立つ:☆☆☆
薦めたい:☆☆☆☆☆
昨年12月の初め頃、うっかりテレビをつけっぱなしていて、
たまたま見たアニメが「獣の奏者エリン」でした。
この回が全50話中の47話、だったので、ストーリーはよくわからないものの、
浮ついた騒々しさのない、子供向けアニメらしからぬ落ち着いた雰囲気や、
絵の美しさ(残虐な場面になると、絵が岡本太郎風になるんですよ!)
西洋と東洋の混じったような風俗がおもしろくて、
原作にも手を出してしまいました。
エリンが暮らすのは、武力を持たない真王と、軍事力で真王を支える大公が上に立つ国。
真王を象徴する獣が、狼のような頭に大きな翼を持つ「王獣」、(←鴻池朋子さんの描く狼っぽい!)
一方、大公の操る獣が、竜のような、鰐のような、鋭い爪をもつ生き物「闘蛇」。
エリンの母は闘蛇専門の獣医師でしたが、闘蛇の大量死の責任を負わされて刑死し、
エリンは蜂飼いの男のもとで成長するうちに、生き物の不思議に夢中になります。
やがて偶然王獣を操る技を編み出してしまったことにより、
真王と大公の間の政治的不和に、否応なく巻き込まれていきます。
エリンが蜜蜂や王獣の謎にのめりこみ、自分の頭で考えることで
ひとつひとつ、疑問を解き明かしていく過程は、
人間の能力の無限の可能性に心おどります。
その一方で、大きな歴史の流れにおける、人間の存在の小ささも感じさせられるストーリです。
ジャンル分けすれば「児童文学・ファンタジー」でしょうか。
小学校高学年になれば読めると思います。
でも、大人の方もぜひ。